転職を考え始めたものの、「自己分析で何をすればいいのか分からない」「自分の強みが思いつかない」「希望条件を考えても、どれを優先すべきか決められない」と悩む人は少なくありません。
こうした迷いが起こりやすいのは、最初から「自分に向いている仕事は何か」「本当にやりたいことは何か」と答えを出そうとするからです。
転職の自己分析では、いきなり性格や適職を考える必要はありません。
まず、これまで自分が仕事で何をしてきたのかという事実を整理することから始めます。
そのうえで、実績、強み、苦手な環境、転職理由、希望条件を順番に整理すれば、求人を見るときの判断基準が見えてきます。
この記事では、職務経験の棚卸しから転職軸を作るまでを順番に解説します。
読み終えるころには、「どのような求人なら自分に合いそうか」「何を条件として確認すべきか」を、自分なりの理由とともに判断できる状態を目指せます。
転職の自己分析は職務経験の棚卸しから始める
転職の自己分析で最初に行いたいのは、性格診断ではなく、これまでの職務経験を書き出すことです。
いきなり「自分の強みは何だろう」と考えても、根拠となる材料がなければ答えは抽象的になりやすくなります。
まずは、どの会社や部署で、どのような役割を持ち、何を担当してきたのかを確認します。
その事実から実績や得意な行動を拾い、その後で強みとして意味づけしていく方が整理しやすくなります。
転職の自己分析で考える内容は、大きく「過去・現在・未来」に分けられます。
過去では、これまで経験した仕事や担当業務、実績を整理します。
現在では、経験から身についたスキルや強み、苦手な環境、仕事で重視している価値観を確認します。
未来では、次の会社に求める条件や転職軸、今後伸ばしていきたい方向を考えます。
ここで目指すのは、自分という人間を完全に理解することではありません。
求人を見たときに「この求人は自分に合いそうだ」「この条件は自分にとって外せない」と判断できる材料を作ることがゴールです。
自己分析が転職活動全体のどの段階にあるのかも確認しておきたい場合は、転職活動の流れを先に把握しておくと、この後に何をするのかも整理しやすくなります。
自己分析の目的は「自分探し」ではなく転職先を選びやすくすること
転職の自己分析は、自分の才能や人間としての優劣を判定する作業ではありません。
これまでの仕事を振り返り、求人選びや職務経歴書、面接などで使う材料を整理する作業です。
そのため、「強みがすぐに見つからないから転職活動を進められない」と考える必要もありません。
最初は事実を書き出すだけで十分です。
担当してきた仕事や工夫したこと、周囲から任されたことを整理すると、その中から後で強みとして使える材料が見つかります。
答えを先に探すのではなく、材料を集めてから意味づけする順番で進めましょう。
「過去・現在・未来」の3つに分けると整理しやすい
自己分析で何を考えるべきか迷ったら、「過去・現在・未来」の3つに分けてください。
過去では、職務経験、担当業務、実績などの事実を整理します。
現在では、過去の経験から身についたスキルや強みのほか、苦手な仕事や働きにくかった環境、仕事で大切にしたい価値観を確認します。
未来では、次の仕事で求める条件や転職軸、これから伸ばしたいスキルやキャリアの方向性を考えます。
最初から3つすべてをきれいに完成させる必要はありません。
過去の経験を書いている途中で強みに気づくこともあれば、希望条件を考えた後で転職理由の本質が見えることもあります。
行き来しながら修正して構わないので、まずは過去の職務経験から整理していきましょう。
STEP1|これまでの職務経験を時系列で棚卸しする
職務経験の棚卸しでは、最初から立派な文章を書こうとする必要はありません。
これまでの職歴を時系列で確認し、自分が何をしてきたのかという事実を漏れなく集めることが目的です。
在籍した会社や部署は一度すべて振り返ります。
ただし、すべての経験を同じ細かさで整理する必要はありません。
直近の仕事や、これから希望する仕事と関係が深そうな経験は詳しく、それ以前の経験は概要だけというように濃淡をつけても問題ありません。
転職回数が多い人も、職歴ごとに区切って整理すれば、自分の経験の共通点や変化が見えやすくなります。
この段階では「これは転職で評価されないかもしれない」と自分で判断して削らないことも大切です。
評価されるかどうかを考える前に、まず材料を集めます。
後から不要なものを外すことはできますが、最初に消してしまった経験から強みを見つけることはできません。
会社・部署・役割・担当業務を職歴ごとに書き出す
最初は職歴ごとに、会社や部署、在籍期間、役割、担当業務を整理します。
そのうえで、どのような顧客や社内関係者を対象にしていたのか、どのようなツールを使ったのか、何人程度のチームで働いたのか、どこまで責任を持っていたのかも思い出してみてください。
たとえば「営業部で法人営業を3年間」とだけ書くよりも、「中小企業の既存顧客を担当し、定期訪問、課題のヒアリング、提案書作成、見積作成、社内の技術担当との調整まで担当した」と整理した方が、実際の経験が見えてきます。
管理職でなくても、後輩の相談対応や新人教育を任されていたなら、それも役割の一つです。
正式な役職だけを見るのではなく、実際にどこまで任されていたのかを確認してください。
ここで作るのは職務経歴書ではないため、完成した文章にする必要もありません。
自分が後で読み返して仕事内容を思い出せる程度に整理できれば十分です。
「営業」「事務」などの業務名を具体的な行動まで分解する
「営業を担当」「事務を担当」「企画を担当」という職種名だけでは、その人が実際に何をしてきたのかは分かりません。
担当業務は、できるだけ具体的な行動まで分解してみましょう。
営業であれば、新規顧客の開拓、既存顧客へのフォロー、商談、ヒアリング、提案資料作成、見積作成、契約条件の調整、受注後のフォローなどに分けられます。
事務職であれば、データ入力という業務名だけでなく、受注内容の確認、売上データの集計、請求書発行、問い合わせ対応、営業担当との確認、マニュアル更新などへ分解できます。
企画や開発などでも考え方は同じです。
「誰に対して」「何を」「どのように行ったのか」を確認すると、仕事内容を具体化しやすくなります。
さらに、Excelや業務システムなどの使用ツール、社内外の関係者、扱った案件数なども加えると、経験の輪郭がさらに明確になります。
この作業をすると、「営業経験しかないと思っていたが、実際には顧客への提案だけでなく、社内調整や進捗管理も多く経験していた」といった気づきが生まれます。
職種名だけでは見えなかったスキルを発見するためにも、仕事内容を行動まで分解してください。
実績は「課題→行動→結果」で整理する
職務経験を書き出したら、その仕事の中で自分が起こした変化を確認します。
実績というと、売上1位や社内表彰のような目立つ成果を想像しがちですが、それだけが実績ではありません。
「どのような課題があり、自分が何をして、その結果どうなったか」という順番で考えると見つけやすくなります。
たとえば、問い合わせ対応に時間がかかっていたため、よくある質問を整理して回答テンプレートを作り、チーム全体の対応時間が減ったのであれば、それも実績候補です。
新人が仕事を覚えるまで時間がかかっていたため、作業手順を整理して引き継ぎ資料を作った経験も該当します。
数字が分かる場合は、売上、達成率、対応件数、作業時間、コスト、ミス件数などを記録しておくと、後から成果を説明しやすくなります。
数字が残っていない場合でも、ミスが減った、顧客からの問い合わせが減った、引き継ぎがスムーズになった、トラブルを収束させた、新人が独り立ちできるようになったなど、状態の変化を確認してください。
実績を大きく見せる必要はありません。
自分が実際に行ったことと、その結果を事実の範囲で整理する方が、後の自己分析にも役立ちます。
また、取引先名や具体的な売上額など、社外へ出せない機密情報は書き方に注意しましょう。
ここまでで、強みを考えるための客観的な材料が集まります。
STEP2|経験と実績から自分の強みを見つける
強みは、何もない状態から考えるのではなく、STEP1で整理した経験と実績の中から探します。
転職で使える強みは、「明るい」「真面目」といった性格だけではありません。
業務知識、専門スキル、仕事の進め方、対人調整、課題への対応方法、特定の環境で積んだ経験など、仕事で再現できる特徴も強みになります。
重要なのは、一度だけうまくいったことではなく、別の場面でも繰り返し使えそうな行動を見つけることです。
複数の職歴で似た役割を任されていたり、別の業務でも同じ方法で成果を出していたりするなら、有力な強み候補になります。
自己分析では、最初から一つに決める必要はありません。
候補をいくつか出し、その中から今後の転職で使いやすいものを残していきましょう。
よく任された仕事と成果を出しやすかった状況を探す
強みが分からないときは、「周囲から何をよく任されていたか」を振り返ってみてください。
顧客からの難しい問い合わせを任されることが多かったのであれば、相手の状況を整理して対応する力があるかもしれません。
資料作成を頻繁に頼まれていたなら、情報を分かりやすく整理することが得意な可能性があります。
数字管理、スケジュール調整、新人教育、関係部署との連携など、自分にとっては当たり前に行っていた仕事の中にも強み候補があります。
同時に、成果を出しやすかった状況も見てください。
一人で集中できる環境で力を発揮したのか、多くの人と相談しながら進める仕事が得意だったのかによって、向いている働き方は異なります。
突発的な問題への対応が得意な人もいれば、数か月単位で改善を積み重ねる仕事で力を発揮する人もいます。
「何ができるか」だけでなく、「どのような状況なら力を出しやすいか」まで確認すると、求人との相性を判断しやすくなります。
強みは「できること+根拠となる経験」で言語化する
強みを言葉にするときは、抽象的な自己評価で終わらせないことが大切です。
たとえば「コミュニケーション能力があります」だけでは、具体的にどのような仕事で力を発揮する人なのかが分かりません。
「顧客と社内担当者の要望を整理し、双方と調整しながら納期を管理してきた」とすると、実際の行動が見えてきます。
スキルと強みも分けて考えると整理しやすくなります。
スキルは、Excelで集計できる、法人営業ができる、会計処理ができる、特定のプログラミング言語を使えるといった、具体的にできる業務や技術です。
一方の強みは、そのスキルや経験を使って成果を出しやすい仕事上の特徴です。
たとえば「複数の関係者から情報を集め、抜け漏れなく進行管理する」「相手の要望を整理し、実行可能な形へ落とし込む」といった形です。
強み候補を見つけたら、その強みを使った経験と成果をセットで整理しておきましょう。
最終的には主要な強みを3つ程度に絞ると扱いやすくなりますが、数は絶対ではありません。
求人選びで自分の特徴を説明できる状態になれば十分です。
苦手な仕事や避けたい環境も相性判断の材料にする
自己分析では、強みだけでなく苦手な仕事や働きにくかった環境も整理します。
ただし、「苦手だから能力がない」と決めつける必要はありません。
細かな単純作業が長時間続くと集中しにくい、急な予定変更が続くと力を発揮しにくい、一人だけで長期間進める仕事より周囲と相談できる仕事の方が進めやすいなど、具体的な状況として捉えてください。
苦手を人格上の弱点として考えるのではなく、「どのような環境では成果を出しにくいのか」という情報として扱います。
この情報は、後で「次の会社では避けたい条件」を決める材料になります。
STEP3|転職理由を「次の職場で求めること」に変換する
ここまでで、自分が経験してきた仕事や強み、苦手な環境が見えてきました。
次は、現在の会社を変えたい理由を、求人選びに使える条件へ変換します。
転職理由がネガティブでも問題ありません。
給与への不満、人間関係、評価制度、業務量、働き方など、転職を考えるきっかけはさまざまです。
大切なのは、無理にきれいな理由へ言い換えることではなく、「なぜその状況が自分にとって問題だったのか」を確認することです。
その理由が分かれば、次の職場で求める条件が見えてきます。
なお、転職理由を整理する途中で「そもそも転職するべきなのか」という迷いが再び大きくなった場合は、自己分析の中で結論を出し直す必要はありません。
その場合は、転職すべきか判断する方法で転職そのものの判断を別途整理してください。
「今の職場で困っていること」を具体的に分解する
「会社が嫌」「上司と合わない」といった状態では、次の会社を選ぶ条件に変換しにくいため、もう一段具体化します。
まず、今の職場で何に困っているのかを事実として整理してください。
次に、その問題は自分の行動で改善できるのか、それとも転職しなければ変えにくい要素なのかを考えます。
たとえば「仕事が忙しい」という不満なら、単純に業務量が多いのか、突発対応が多いのか、人手不足なのか、役割分担が不明確なのかによって求める環境は変わります。
「評価に不満がある」場合も、給与が上がらないことが問題なのか、評価基準が見えないことが問題なのか、成果と評価が連動していないことが問題なのかを分けて考えます。
そして最後に、「次の職場ではどのような状態なら同じ不満が起こりにくいか」を考えてください。
不満を分析する目的は、今の会社への不満を増幅させることではありません。
次の求人を見るときの確認項目へ変えることです。
「嫌だったこと」の反対側から仕事で重視する価値観を見つける
仕事で重視する価値観が思いつかない場合は、嫌だった経験の反対側を考えると見つけやすくなります。
たとえば、「評価基準が不透明で納得できなかった」という経験があるなら、役割や評価基準が明確であることを重視している可能性があります。
「勤務時間をほとんど調整できなかったことが負担だった」のであれば、働く時間の裁量や柔軟性が重要なのかもしれません。
「上司と合わなかった」という場合も、人柄だけで終わらせず、細かく指示されることが苦しかったのか、相談できないことが問題だったのか、方針が頻繁に変わることに困ったのかを考えます。
転職理由は消すものではなく、希望条件の根拠として使える情報です。
「今の会社で嫌だったから避けたい」だけでなく、「自分は仕事をするうえで何を大切にしているのか」まで言葉にできると、転職軸を作りやすくなります。
STEP4|希望条件に優先順位をつけて転職軸を作る
転職理由から次の会社に求める状態が見えてきたら、具体的な希望条件へ落とし込みます。
転職軸とは、求人を選ぶときの判断基準です。
企業名や求人票の印象だけで応募先を決めるのではなく、「自分にとって何が重要か」という基準を持って比較するために作ります。
この段階で重要なのは、最初から希望を少なくしすぎないことです。
まずは思いつく条件を広く出し、その後で優先順位をつけます。
理想をすべて実現できる求人を探すのではなく、自分にとって何を優先し、何なら調整できるのかを決める作業だと考えてください。
仕事内容・年収・働き方など希望条件を一度すべて書き出す
まずは実現可能性を気にしすぎず、次の仕事に求める条件を書き出します。
仕事内容、年収、勤務地、リモートワークの有無、残業時間、休日、身につけたいスキル、今後のキャリア、評価制度、業界、会社規模、事業の安定性、仕事の裁量など、考えられる条件を一度見える状態にしてください。
管理職として進みたいのか、専門職として経験を深めたいのかという方向性も条件になります。
この段階で「自分の経験では年収アップは無理だろう」「未経験職種は難しそうだ」と決めつける必要はありません。
実際に市場で実現できるかどうかは、後から求人や市場情報を見て確認できます。
ここでは、自分が何を望んでいるのかを把握することを優先してください。
希望条件は「譲れない・できれば欲しい・優先度が低い」の3段階に分ける
希望条件を出した後は、すべてを必須にせず優先順位をつけます。
「譲れない」は、その条件を満たさないなら基本的に応募しないものです。
「できれば欲しい」は、複数の求人を比較するときの加点材料です。
「優先度が低い」は、満たされなくても転職の満足度に大きく影響しない条件です。
さらに、それぞれの条件に「なぜ必要なのか」という理由も付けておくと判断しやすくなります。
たとえば年収500万円以上を希望する場合も、「生活費の都合で必要」なのか、「現職より評価を上げたい」なのかで、その条件の意味は異なります。
転職軸は次のように整理できます。
| 条件 | 優先度 | 必要な理由 | 求人で確認するポイント |
|---|---|---|---|
| 希望する仕事内容に関われる | 譲れない | 今後も専門性を伸ばしたい | 担当業務、配属先、入社後の役割 |
| 年収が現職以上 | できれば欲しい | 収入を下げずに転職したい | 想定年収、賞与、評価制度 |
| リモート勤務 | できれば欲しい | 通勤時間を減らしたい | 利用可能日数、対象部署 |
| 大手企業である | 優先度が低い | 安定感は魅力だが最優先ではない | 会社規模より仕事内容を優先 |
条件の数を無理に3つへ絞る必要はありません。
ただし、何もかも「譲れない」にすると応募できる求人が極端に少なくなるため、本当に外せない理由があるかを確認しましょう。
年収・仕事内容・働き方など条件同士のトレードオフを確認する
希望条件は、お互いに競合することがあります。
たとえば、年収アップ、残業時間の大幅削減、未経験職種への転職、フルリモート勤務をすべて同時に希望した場合、対象となる求人が限られることがあります。
このようなときに重要なのが、「全部ほしい」で止まらず、どの条件を最も優先するかを考えることです。
年収を重視すること自体に問題はありません。
ただし、年収だけで転職先を決めると、仕事内容や働き方が合わず、別の不満が生まれる可能性もあります。
反対に、働き方だけを優先して仕事内容をほとんど確認しなければ、今後伸ばしたいキャリアとずれることもあります。
「年収が多少下がっても未経験職種へ挑戦したい」「仕事内容を優先するが、長時間残業は避けたい」など、条件同士が競合した場合の自分なりの判断ルールを決めておくと、求人比較がしやすくなります。
希望が市場でどこまで実現できるかは、自己分析の中だけで決める必要はありません。
後で市場情報を確認しながら調整します。
STEP5|次の数年間で伸ばしたい方向を決める
転職軸には、現在の不満を解消する条件だけでなく、今後どの方向へ進みたいかという視点も加えておきましょう。
ここで10年先まで完璧なキャリアプランを決める必要はありません。
数年後にどのような経験を増やしていたいかという程度の仮説があれば十分です。
今の職種で専門性を高めたいのか、マネジメントへ進みたいのか、別の業界で経験を生かしたいのか、職種そのものを変えたいのかによって、選ぶべき求人は変わります。
「今の会社が嫌だから転職する」だけで求人を見るより、「次の数年間でこの経験を伸ばしたい」という方向がある方が、転職後の仕事内容を判断しやすくなります。
やりたいことが分からなければ「続けたい・得意・避けたい」から考える
「何がしたいか分からない」と悩んでいる場合、無理に天職や心からやりたい仕事を探す必要はありません。
これまでの仕事の中から、今後も続けたい仕事、比較的苦にならなかった仕事、得意だった仕事、反対に避けたい仕事や環境を整理してみてください。
たとえば、「顧客との調整は続けたい」「売上目標だけを追う営業は避けたい」「資料を整理して提案することは得意だった」と分かれば、次に検討する仕事の方向はある程度絞れます。
「やりたいこと」が明確でなくても、「続けてもよいこと」「得意なこと」「避けたいこと」の組み合わせから、現実的な候補を作ることはできます。
最初から一つの職種へ決めず、複数の方向候補を持っておいても問題ありません。
10年先ではなく「次の数年間で何を伸ばしたいか」を考える
将来について考えるときは、10年後の役職や働き方まで固定する必要はありません。
現時点で「次の数年間に何を増やしたいか」を考えてみましょう。
今の職種の経験を深めたいのか、マネジメント経験を積みたいのか、専門性を高めたいのか、別の業界や職種へ移りたいのかという程度で十分です。
働き方そのものを変えたい人もいます。
たとえば、転勤を避けながら専門性を高めたい、管理職より専門職として経験を積みたいといった方向もキャリアの選択肢です。
ここで決める内容は、あくまで現時点の仮説です。
実際の求人や市場情報を見て、「思ったより選択肢が多い」「希望する方向では別のスキルが必要」と分かったら修正して構いません。
自分だけで分からない部分は他者の意見や診断を補助的に使う
ここまで自分で整理しても、強みや特徴が分からない部分は残ることがあります。
その場合は、上司や同僚などから意見をもらったり、適性診断や性格診断を使ったりする方法もあります。
ただし、どちらも自分のキャリアの正解を決めてもらうために使うものではありません。
自分だけでは気づかなかった特徴を見つけるための補助材料として使います。
他者から言われた強みや診断結果が、これまでの職務経験と一致しているかを確認することが重要です。
上司や同僚には「仕事で何をよく頼まれているか」を聞く
他人に強みを聞く場合、「私の強みは何だと思う?」と漠然と質問するより、実際の仕事に関する質問をした方が具体的な回答を得やすくなります。
上司や同僚、以前一緒に働いていた人に、「私はどんな仕事をよく頼まれていると思う?」「どんな場面で頼りになると思う?」と聞いてみましょう。
複数の人から似た内容を言われるなら、自分では普通だと思っていた行動が強みである可能性があります。
ただし、他人からの評価だけを正解にする必要はありません。
実際の経験と照らし合わせて、自分でも納得できるものを強み候補として残してください。
適性診断・性格診断は実際の経験と照らし合わせる
適性診断や性格診断も、自己分析のヒントとしては利用できます。
ただし、「営業向き」「企画向き」といった結果だけで転職先を決めないようにしましょう。
診断結果が出たら、過去の経験と照らし合わせます。
たとえば「人との調整が得意」と出た場合、実際に顧客対応や社内調整で成果を出した経験があるかを確認してください。
診断結果と職務経験が一致するなら、自己理解を補強する材料になります。
一致しない場合も、診断を間違いと決める必要はありません。
あくまで「こういう特徴もあるかもしれない」という仮説として扱い、実際の仕事での経験を優先して判断しましょう。
自己分析の結果を「転職用キャリア棚卸しシート」1枚にまとめる
ここまで整理した内容は、最後に1か所へまとめます。
自己分析を頭の中だけで終わらせず、求人を見るときにすぐ確認できる形にしておくためです。
転職用キャリア棚卸しシートには、担当した仕事、実績、強み、苦手な環境、転職理由、希望条件、今後伸ばしたい方向を集約します。
完成度の高い資料を作る必要はありません。
目的は、自分の経験や希望を見返しながら、求人との相性を判断できる状態にすることです。
ここで整理した内容は、後で職務経歴書の書き方に沿って応募書類を作る際の素材にも使えます。
ただし、この段階では自己PRや職務経歴書の文章まで完成させなくて構いません。
まずは転職先を選ぶ材料として整理することを優先してください。
経験・実績・強み・転職理由・希望条件を一覧化する
キャリア棚卸しシートは、次のような項目を1枚にまとめるイメージです。
| 整理項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 担当した仕事 | 実際に担当した業務や役割 |
| 求められたこと | 上司や顧客から期待されていた役割 |
| 課題 | 仕事の中で困っていたことや改善対象 |
| 自分の工夫・行動 | 課題に対して自分が行ったこと |
| 結果 | 数字や状態の変化 |
| よく任されたこと | 周囲から繰り返し頼まれた仕事 |
| 得意だったこと | 成果を出しやすかった業務や状況 |
| 苦手だったこと | 力を発揮しにくかった仕事や環境 |
| 今の会社を変えたい理由 | 現在感じている不満や問題 |
| 次の会社で求める状態 | 同じ問題を避けるために必要な環境 |
| 譲れない条件 | 満たされなければ応募しない条件 |
| できれば欲しい条件 | 求人比較で加点したい条件 |
| 今後伸ばしたいこと | 数年間で増やしたい経験やスキル |
| 次に市場で確認すること | 年収、求人の有無、必要スキルなど |
転職軸については、条件名だけでなく「なぜ必要なのか」まで書いておくと、求人選びで迷いにくくなります。
たとえば「リモート勤務」とだけ書くのではなく、「家庭との両立のため週2日以上必要」というように理由を加えます。
理由が分かれば、似た条件の求人が複数あったときにも比較しやすくなります。
ここまで整理できたら、自己分析をさらに深掘りすることよりも、実際の市場情報を見る段階へ進むことをおすすめします。
求人を見たときに「合う・合わない」の理由を説明できれば一度終了する
自己分析には、誰にでも共通する完璧な終了地点があるわけではありません。
ただし、転職活動を進めるうえでは、一度区切ってよい目安があります。
自分がこれまで何を経験したか説明でき、強み候補を根拠となる経験とともに話せること。
どのような仕事や環境を避けたいのか分かっていること。
次の会社で譲れない条件を説明できること。
そして求人を見たときに、「この求人は自分に合いそう」「この求人は希望とずれる」と理由を言えることです。
ここまでできていれば、自己分析はいったん終了して構いません。
転職市場を見て新しい情報が入ったら、その都度キャリア棚卸しシートや転職軸を修正すれば十分です。
自己分析ができたら次は市場価値を確認する
自己分析で分かるのは、自分がこれまで何をしてきたか、何が得意そうか、次の仕事に何を求めるかという「自分側の情報」です。
一方で、自己分析だけでは、その経験が転職市場でどの程度評価されるのか、希望する年収の求人があるのか、希望職種へ転職するために何が足りないのかまでは判断できません。
そこで次に行うのが、市場側からの確認です。
実際の求人を見ると、自分では強みだと思っていなかった経験が募集要件に多く書かれていることがあります。
反対に、希望する仕事では、自分がまだ持っていない経験やスキルが求められていることもあります。
年収や働き方についても、市場情報を確認することで、現在の転職軸がどの程度実現しやすいのかが見えてきます。
自己分析の結果と市場の情報がずれていた場合は、自己分析が失敗だったわけではありません。
求人を見た結果を使って、希望条件やキャリアの方向を修正すればよいだけです。
自己分析は一度決めた内容を固定するための作業ではなく、転職活動を進めながら更新する判断材料です。
経験、強み、希望条件を一通り整理できたら、そこで自己分析を長引かせず、次は市場価値の調べ方へ進みましょう。
自分の経験がどのような求人で求められているのか、希望条件が現実的なのかを外部情報から確認することで、応募先を探すための基準がさらに具体的になります。
自己分析の次にやることは、さらに自分を掘り下げることではありません。
整理した自分側の材料を、実際の転職市場で確かめることです。

